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爆発的成長に期待!新興国ETFを徹底比較してみた

アフリカに始まり、タイ→シンガポール→インドネシア→フィリピン→メキシコ→ロシア→インド→ブラジル→ポーランド→マレーシアと新興国ETFの記事をこれまで更新してきました。この機会に一度整理をして、比較記事を書いてみたいと思います。

はじめに:前提条件

先ず、この記事の前提条件として以下の3つがあります。

  1. 新興国全てを網羅しているわけではない(例:中国、トルコ、ベトナム等は含まれていない)
  2. シンガポールなど新興国とは言えない国もあるが、注目している国の一つという括りで入れている
  3. 2021年1月時点で、SBI証券で取引可能な銘柄を紹介

それでは始めていきましょう!

純資産総額ランキング

順位ティッカー国/地域純資産総額(USドル)設定年
1位EWZブラジル61億9,124万ドル2000年
2位EWWメキシコ14億2,716万ドル1996年
3位EPIインド7億5,366万ドル2008年
4位EWSシンガポール6億8,532万ドル1996年
5位ERUSロシア4億7,607万ドル2010年
6位THDタイ4億6,921万ドル2008年
7位EWMマレーシア4億277万ドル1996年
8位EIDOインドネシア3億9,427万ドル2010年
9位EPOLポーランド2億8,325万ドル2010年
10位EPHEフィリピン1億5,486万ドル2010年
11位AFKアフリカ5,610万ドル2008年
(各運用会社HPより筆者作成)

ETFの純資産総額は、圧倒的にブラジルのETF「EWZ」が多いという結果になりました。当然ETFの設定年(運用開始年)によって、資金流入量が変わってくるので、右に設定年も付け足しています。こうして見ると、新興国の中でも経済が比較的発展している国に資金が入っていて、アフリカなどフロンティアと呼ばれる地域に資金がまだあまり入っていないことが分かります。

セゾン投信社長の中野晴啓さんは著書「つみたてNISAはこの8本から選びなさい」の中で、投資信託(及びETF)を選ぶ際の判断基準の一つとして「純資総額50億円以上」を挙げています。これは純資産総額が少ないETFは、運用会社が運用をやめてしまうという償還リスクが伴うからです。上記に挙げたETFは全て純資産総額50億円以上をクリアしており、各国の代表的なETFですので、償還リスクはまずないと言って良いでしょう。

経費率ランキング(安い順に集計)

順位ティッカー国/地域経費率
1位EWWメキシコ0.51%
1位EWSシンガポール0.51%
1位EWMマレーシア0.51%
4位EWZブラジル0.59%
4位ERUSロシア0.59%
4位THDタイ0.59%
4位EIDOインドネシア0.59%
4位EPOLポーランド0.59%
4位EPHEフィリピン0.59%
10位AFKアフリカ0.79%
11位EPIインド0.84%
(各運用会社HPより筆者作成)

経費率は毎年の運用にかかるコストですので、長期投資を考える際には非常に重要な尺度です。

経費率は、一応全ての銘柄で1%以下となっています。すごく格安ではないですが、新興国に特化しているETFであるということを考えると、この経費率は許容範囲だと思います。また、インドのETF「EPI」の経費率が高くなっているのは、「利益額の大きい銘柄により多く投資する」というウィズダムツリー社独自の運用ルールに基づいているためで、保有銘柄300を超えていることからも小型株~大型株までインド全体に投資ができる魅力的なETFになっています。

直近1年間の株価騰落率ランキング

順位ティッカー国/地域株価騰落率
1位EPIインド+19.57%
2位AFKアフリカ+6.80%
3位EWMマレーシア-0.42%
4位EPHEフィリピン-3.35%
5位THDタイ-5.65%
6位EWSシンガポール-6.86%
7位EIDOインドネシア-6.93%
8位EWWメキシコ-9.36%
9位EPOLポーランド-9.58%
10位ERUSロシア-13.83%
11位EWZブラジル-25.54%
(2020.1.23-2021.1.22を比較)

直近1年間の株価騰落率を比較した表が上です。実はインドとアフリカのETFを除き、まだ新興国ETFの株価はコロナ前の水準に戻っていません。

しかし、世界の新興国株に連動するETF「VWO」は同じ時期で20%上昇、同じく世界の新興株に連動するETF「EEM」は24%の上昇を示しています。なぜ上記に挙げた新興国株のほとんどが株価を下げているのに、世界の新興国に連動するETFは株価を上げているのでしょうか?

それはポートフォリオの構成に偏りがあるからです。

例えば、VWOは中国が42.5%、台湾が16.5%、インドが11.0%と、この3ヵ国だけで全体の70%を占めています。また、EEMは中国39.69%、台湾13.67%、韓国13.59%、インド8.95%で全体の75.9%です。ですから、巷で新興国株は強いと言われているけども、中国を初めとした極一部の国の株価だけが上昇し、新興国ETFの株価上昇を牽引しているのです。

分配金利回りランキング(2020年の分配金実績ベース)

順位ティッカー国/地域分配金利回り
1位ERUSロシア4.26%
2位AFKアフリカ3.70%
3位EWSシンガポール2.57%
4位THDタイ2.24%
5位EWMマレーシア1.94%
6位EWZブラジル1.81%
7位EIDOインドネシア1.45%
8位EWWメキシコ1.43%
8位EPOLポーランド1.43%
10位EPIインド0.75%
11位EPHEフィリピン0.73%
(分配金利回りランキング)

2020年の分配金実績と2021年1月22日の終値で試算した分配金利回りランキングです。

新興国ETFのほとんどで2020年は減配していますから、高分配と言える銘柄はロシアの「ERUS」とアフリカの「AFK」くらいでしょうか。ですが、今後コロナが終わり平時に戻れば分配金も元の水準まで戻ることが期待されますから、今株を買うことで後に高い利回りを享受できるかもしれません。

新興国ETF全11銘柄に対する筆者の見解

EWZ(ブラジル)

「EWZ」は、僕自身も保有している銘柄の一つです。

ブラジルは鉄鉱石の生産が豊富で、「ヴァーレ」という鉱山会社が有名です。現在資源価格高騰の恩恵を受け、EWZの株価もコロナ底値から順調に回復しています。ただし、資源価格の影響を受けるということで、その分値動きも激しいことに注意です。底値で拾えれば株価上昇の恩恵を受けることができますが、高値で買ってしまうと暴落で大損する可能性があります。よって、EWZは「リスク高・リターン高」の投資だと思います。

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EWW(メキシコ)

「EWW」は、2021年僕が注目している銘柄の一つです。

理由は、アメリカのバイデン政権の誕生により、メキシコにとっても有利になると考えるからです。トランプ政権時は、移民や関税のことで、「アメリカ・ファースト」を掲げるトランプ政権の下でメキシコは逆風にさらされていました。しかしバイデン政権は他国との貿易において無理難題を押し付けるようなことはないでしょうから、メキシコとの貿易も安定が期待されます。

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EPI(インド)

インドは必ずと言って良いほどポートフォリオに組み込んでおきたい投資対象です。なぜならインドは今後、世界一の人口大国になることが見込まれ、GDPもいずれアメリカを抜き、世界第2位の経済大国になるからです。

実際、アメリカのGoogleを始め、多くの多国籍企業がインドに投資をしています。それは言うまでもなくインドに可能性を感じているからに他ありません。また、インドETF「EPI」も過去最高高値を更新中です。まだまだ国民の所得水準が低いインドは、今後の成長に余力を残しており、更なる株価上昇は間違いないでしょう。

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EWS(シンガポール)

シンガポールはもはや新興国ではなく、世界的な金融ハブの一つですね。

シンガポールに投資する妙味は「分配金利回り」だと思います。上記の「分配金利回りランキング」では、3位で2.57%となっていますが、2019年の分配金実績で換算すると利回りは5%を超えます。「EWS」は、爆発的な株価の成長は見込めませんが、世界的な金融のハブとして今後も高い利回りを出してくれる銘柄であることを期待します。

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ERUS(ロシア)

「ERUS」も、ブラジルのEWZと同じく「リスク高・リターン高」のETFだと思います。

ロシアは産油国で、ERUSのポートフォリオもエネルギー企業が上位を占めています。よって、原油価格との相関性が非常に高いです。原油価格はその時その時で変動が激しいコモディティなので、ERUSもその影響をモロに受けます。加えて、米国・中国・ロシアを渦巻く地政学リスクもあるので、ERUSに多くのお金をつぎ込むのはリスクが高いと思います。しかし、原油価格の上昇の恩恵を受ける銘柄でもあるため、短中期投資(3~5年)でリターンを最大化する戦略は面白いと思います。

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THD(タイ)

タイは東南アジア諸国の中でもシンガポール、ブルネイ、マレーシアに次ぐ高所得国であり、日本人にも馴染みのある国です。実際、世界の中でもタイは「上位中所得国」に分類され、「安定した成長」が期待できる国だと思います。

タイは2020年~現在に至るまで内政問題を抱えています。タイの首都バンコクでは主に若者によるデモが発生し、混乱の最中にあります。それによって、株価は右肩上がりというよりも上下を繰り返していくかもしれません。しかし、内政の問題を解決し、コロナ終息により観光需要が戻ってくれば、タイ経済も大きく回復してくれると思っています。

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EWM(マレーシア)

個人的に、マレーシアは東南アジアで一押しの国です。

なぜなら、「高所得・高成長」の国だからです。世界銀行の定義によれば、一人当たりGNIが12,236米ドル以上だと「高所得国」とみなされるそうです。2019年のマレーシアの一人当たりGNIが11,230米ドルですから、後もう少しで高所得国の仲間入りをすることになります。

さらに、2021年の実質GDP成長率予測は、7.8%と近隣のインドネシア、フィリピン、タイ、ベトナムを超える見込みで、マレーシアは今現在最も魅力的な投資先の一つだと考えます。

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EIDO(インドネシア)

インドネシアのETF、「EIDO」は今後長期で保有したい銘柄の一つです。

インドネシアは東南アジア最大の人口を誇り、2050年には3億人を超え世界第5位の人口を持つと予想されています。また、2050年までに米国に次ぐ経済大国となることが見込まれており、文字通り「東南アジアのエース」になる存在だと思います。

そんなインドネシアのETF「EIDO」は目先の株価に一喜一憂せず、将来の成長のために腰を据えて投資をしていきたい銘柄です。

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EPOL(ポーランド)

今回の記事で紹介している国のほとんどがアジアや中南米の国なのに、「なぜポーランド??」と思った方もいるかもしれません。

そう思った方はこのツイートをご覧ください。

デメリットもありますが、それ以上にメリットが興味深いと僕は思っています。実際、PwCのレポートでは「ポーランドはEUの経済大国の中でも最も高い平均成長率になり、長期的にはロシアを追い越すと予想される。」と書かれています。

「高い経済成長率」と「高度人材」がポーランドの魅力です。

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EPHE(フィリピン)

こちらもツイートの引用です

総じて東南アジア諸国は成長著しいのですが、フィリピンも例外ではありません。何より国民の平均年齢が20代と、エネルギーに満ち溢れた国の一つです。しかし、マニラに次々と建設される高層マンションの好況とは裏腹に、人口3,000万人以上を抱えるメトロマニラには電車の路線が2本しかないなど、インフラ整備が追い付いていないのが現状です。今後は海外からのマネーに頼らず、地場産業を構築していくことがフィリピン発展の課題であると考えます。

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AFK(アフリカ)

アフリカ大陸は、新興国というよりも、「フロンティア」と呼ぶ方がふさわしいかもしれません。世界で一番最後に発展する地域ですね。

アフリカの魅力は、何と言っても莫大な人口増加です。2013年では、世界人口トップ13ランキングにアフリカから2ヵ国(ナイジェリア・エチオピア)しか入っていませんでしたが、2050年には4ヵ国(ナイジェリア・エチオピア・コンゴ・タンザニア)になり、2100年には6ヵ国になる見込みです。(出典:「世界ランキング統計局」

また、アフリカは資源が豊富なので、コモディティ価格と連動する傾向にあります。コロナショック以降、世界的な金融緩和とドル安の影響もあって、コモディティ価格が上昇しています。実際「AFK」のパフォーマンスも直近1年間で+6.80%と、今回紹介したETFの中ではインドのEPIに次ぐ株価高騰となっています。

ですが、アフリカはまだ未知数な部分が多いのも事実です。ちょっとした出来事で株価の乱高下がある可能性があるため、AFKに投資する際はポートフォリオの3~5%などと、ルールを設けて投資しましょう。

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まとめ:新興国は魅力たっぷりの投資先

これまで10ヵ国・1地域(アフリカ)の新興国ETFの紹介をしてきましたが、いかがでしたでしょうか?

2020年は、コロナショック後の世界的な金融緩和により、最終的には急激な株高となりました。米国株を筆頭に、日本、韓国、台湾、中国、インドの株なども大きく上昇しました。

しかし今回見たように、新興国の中にはいまだにコロナ前の株価水準に戻っていないところも沢山あります。

これを「成長余力がまだある」と見るか、「コロナ打撃をもろにくらって回復できない」と見るかは、それぞれ個人の判断になるかと思います。

僕自身は少なくとも、今後の人口増加と経済成長の見込みから、投資家の目線も新興国に向くと考えています。

ただまだ経済が脆弱な新興国は、それ自体で成長を促すのが難しいことも事実です。米国経済や為替の影響、その他地政学的リスクと常に隣り合わせであります。そうしたダイナミズムの中でも、新興国の可能性を信じ、自らのリスク許容度の範囲内で新興国にも投資をしていきたいと思います。

※当ブログでは特定の銘柄に関する記述がありますが、投資を推奨するものではありません。投資の際は自己判断でお願いします。