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ポートフォリオに組み込む!5種類の債券ETFを徹底比較

今回の記事では、これまで紹介してきた5つの債券ETFを比較していきたいと思います。今回も、個人的な見解を多分に含んだ内容となっていますので、ご了承ください。

今回取り上げる債券ETF

  1. TLT・・・米国の償還期間が20年超の国債に投資するETF
  2. LQD・・・米国の投資適格社債に投資するETF
  3. AGG・・・米国のあらゆる債券(総合債券市場)に投資するETF
  4. HYG・・・米国のハイイールド社債に投資するETF
  5. EMB・・・新興国の国債に投資するETF

この5つのETFを比較していきたいと思いますが、債券と言っても種類の違いがあるので、種類によって分類した表がこちらです。

債券の種類銘柄名
国が発行する債券(国債)TLT、EMB
企業が発行する債券(社債)LQD、HYG
総合債券(あらゆる債券をまとめたもの)AGG

TLTとEMBが、国が発行する「国債」に投資、LQDとHYGが企業が発行する「社債」に投資、AGGが国債や社債、その他の債券をまとめた「総合債券」に投資をするETFです。

5つの違いはなに?

TLTとEMBが「国債」、LQDとHYGが「社債」、AGGが「総合債券」に投資をするというのは分かったけど、具体的な違いは何でしょうか?

その違いを表すものとして、利回りの考え方が大事です。

一般的に、

高利回りの債券 =信用格付けが低い

低利回りの債券 = 信用格付けが高い

という特徴があります。

信用格付けとは、S&P社などの民間の格付け機関が国や企業の財務的な信用力を測るもので、格付けが高いほど財務的に安全(信用力が高い)ということになります。

では、それぞれの利回りを見てみましょう。(※利回りは2021年3月12日終値を元に計算)

銘柄名分配金利回り
TLT(米国20年超国債ETF)1.74%
AGG(米国総合債券ETF)2.22%
LQD(米国投資適格社債ETF)2.85%
EMB(新興国国債ETF)4.15%
HYG(米国ハイイールド社債ETF)4.93%

利回りが低い順に並べて見ると、TLT→AGG→LQD→EMB→HYGとなっています。つまり、TLTが最も財務的に安全で、HYGが最も危険だと言うことができます。

それもそのはずで、TLTは米国の国債に投資をしているので、発行元の米国が破綻するというリスクは非常に低いです。一方で、HYGの投資先はハイイールド社債(いわゆるジャンク債)で、信用格付けが低く、財務的に安全でない企業が発行した社債をまとめたETFになるので、利回りが高くなるのは当然ということになります。

値動きの違いを見る

次に、それぞれのETFの値動きの違いを見てみましょう。

(2020年1月1日~2021年3月15日のチャート)

がTLT、ピンクがLQD、黄色がAGG、がHYG、がEMBとなっています。以下に、パフォーマンスが良い順に並べた表を示します。

銘柄騰落率
TLT(米国20年超国債ETF)+51.36%
LQD(米国投資適格社債ETF)+23.58%
AGG(米国総合債券ETF)+10.27%
EMB(新興国国債ETF)+6.56%
HYG(米国ハイイールド社債ETF)-1.57%

なんと、一番財務的に安全とされているTLTが最もパフォーマンスが良くて、逆に財務的に不安定な企業の社債を集めたHYGのパフォーマンスが最も悪くなっています。

では、次に値動きの幅を示す標準偏差を見ていきましょう。標準偏差とは、値動きのバラつきを表す指標で、数値が高いほど株価の上下のブレが高く、数値が低いほどブレが少ないということを示します。

銘柄名標準偏差
AGG(米国総合債券ETF)3.43%
LQD(米国投資適格社債ETF)7.67%
HYG(米国ハイイールド社債ETF)8.61%
EMB(新興国国債ETF)11.44%
TLT(米国20年超国債ETF)13.41%
(ブラックロック公式HPを基に筆者作成)

これを見ると、最も値動きが小さいのがAGGとなっています。そして、TLTが最も値動きのバラつきが大きいという結果になりました。

ここまでそれぞれのETFの分配金利回り株価騰落率標準偏差を見てきました。これらの情報を踏まえて、どのような投資判断をしていくか、個人的な見解を以下でまとめてみました。

5つの債券ETFに関する考察

①TLT(米国20年超国債ETF)- 株価暴落時に強い

実は、コロナショックでほぼ全ての金融商品が下がった中で、TLTは株価が上がったんですね。これは、多くの投資家が、株などのリスク資産から米国国債というリスクフリー資産に資金を移行したことが理由に挙げられます。

それほど、米国の国債というのは信頼度が高いということです。ただし、一つ留意するべき点は、国債の償還期間です。一般的に、償還期間が1年未満の短期国債よりも償還期間が長い長期国債の方が値動きの幅が大きいと言われています。それは、短期国債は中央銀行の決める政策金利に大きく左右される一方で、長期金利はそれだけでなく、景気の動向やインフレ率など不確定要素が絡み合って価格が決定されるからです。ですから、TLTのように償還期間が長い超長期国債に投資する場合は、値動きの幅が大きいということを十分に理解した上でポートフォリオに組み込みましょう。

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②LQD(米国投資適格社債ETF)- 分配金利回り3%以上を目指したい

LQDは、AGGと並んで非常に安定したリターン(主にインカムゲイン)を目指せるETFと言えるでしょう。なんと2,000種類を超える投資適格社債に分散投資がされており、間接的にアップルやAT&T、シティグループなどの超大手企業が発行する社債に投資することができます。

個人的な欲を言えば、現在の利回りが2.85%なので、分配金利回りが3%くらいになった段階(株価が122ドル以下)で買ってみたいという気持ちがあります。

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③AGG(米国総合債券ETF)- 債券ETFの王様

AGGは、米国国債だけでなく、社債や不動産担保証券などあらゆる債券に投資ができる総合債券ETFです。なんと8,000種類を超える債券に分散投資がされており、しかもその内約70%が最上位の格付けのAAAという、まさに債券ETFの王様と呼べるようなETFです。

この5つのETFの中でどれか一つだけ選べと聞かれたら、僕は迷わず「AGG!」と答えるでしょう。それくらい信頼度の厚いETFになっています。

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④HYG(米国ハイイールド社債ETF)- 分配金利回り5%狙える

HYGは、信用格付けが低い「ジャンク債」と呼ばれる社債に投資をするETFです。リスクが高い分、利回りも高いことが特徴です。HYGは、国債や信用格付けの高い社債などと比べて、株価暴落時に弱いということが言えます。なぜなら、○○ショック時には、まず信用不安が高い企業から潰れていく可能性が極めて高くなるからです。しかし、1つの企業に投資をするのは怖いけど、HYGでは1,300種類もの債券に投資していますから、仮に一つの発行体が倒産の危機に瀕したとしても、全体としてリスクを最小限に抑えられるという効果が期待できます。

僕は、HYGを買うならタイミングを慎重に図りたいと思っています。もっと言うなら、「株価暴落時」に仕込みます。なぜなら、株と違って右肩上がりではないので、高値掴みをして(結果的に)含み損を抱える可能性があるからです。

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⑤EMB(新興国国債ETF)- 国債に投資で利回り4%以上

EMBは、30を超える新興国が発行する国債に投資をするETFです。高利回りという点でHYGと似ている部分がありますが、HYGは信用度が低い「社債」に投資をしているのに対し、EMBは新興国の「国債」に投資をしている点が異なります。

EMBの投資先を見て見ると、カタール、トルコ、サウジアラビア、ロシア、フィリピン、コロンビアなどとなっています。この中には、フィリピンやコロンビアなどのようにいわゆる途上国と呼ばれる国もありますが、カタールやサウジアラビアなど石油マネーで潤っている国もありますね。そういった点では、HYGなどのようにほぼ全ての投資先が「ジャンク債」というものと比べると、わずかではありますが、EMBの方がリスクが多少低いのかなと感じます。 

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※当ブログでは特定の銘柄に関する記述がありますが、投資を推奨するものではありません。投資の際は自己判断でお願いします。