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インフレヘッジになる!?米国物価連動国債ETF【TIP】を紹介

TIPはiシェアーズ米国物価連動国債ETFと言います。「ブルームバーグ・バークレイズ米国TIPSインデックス(シリーズL)」への連動を目指しています。経費率は2021年2月10日時点で、0.19%、純資産総額は274億3,385万ドル、大手のブラックロック社が運用しています。

米国物価連動国債とは何か?

米国物価連動国債を英語で言うと、「Treasury Inflation-Protected Securities(TIPS)」と言います。これは、インフレ(物価上昇)に応じて元本価額も上昇するので、インフレに強い商品と言われています。

通常、物価連動国債が有利になる局面は、「実質金利」が低下する時と言われています。以下が実質金利を求める際の計算式になります。

実質金利 = 名目金利(10年国債金利) - ブレーク・イーブン・インフレ率(期待インフレ率)

つまり、期待インフレ率(将来10年に渡って起こるであろう年間のインフレ率)が上がっているのにも関わらず、実際の金利(10年国債金利)が上がっていない場合に、物価連動国債が有利になると言えます。

実際のアメリカの実質金利はどうなっているか

まずは、10年債の実質金利の推移をご覧ください。

これを見ると、現在は実質金利がマイナスになっていることが分かります。つまり、期待インフレ率が上昇しているのに、現在の金利がそこまで上がっていないということです。

こうなっている要因の一つに、FRB(米連邦準備制度理事会)が金融緩和により「政策金利を低く保っている」ことと、「一定程度のインフレ率を許容」していることが挙げられます。

通常、景気が悪いときに金利は低く保たれます。それによって、市場でお金が回りやすくなるためです。しかし、その結果として10年物期待インフレ率が2.21%と2014年来の水準まで上がっています。

したがって、「期待インフレ率が上昇し、実質金利が低下する」という物価連動債にとって有利な環境に現在あるということが言えると思います。

iシェアーズ米国物価連動国債ETF【TIP】のチャート

それではここ15年のTIPのチャートを見てみましょう。

これを見ると、ここ15年で100ドルから127ドルになっており、27%の上昇を見せています。しかも、これまでの2012年の最高値を上回り、さらに上昇し続けていることが分かります。

これは先ほど見た、期待インフレ率の上昇と実質金利の低下によって説明ができ、実際高値を付けていた2012年台も期待インフレ率が高く、実質金利がマイナスでした。

今後、インフレが本当に起こるのか

先ずはこのチャートを見て下さい。

これは、アメリカのマネーサプライ(世の経済に出回っているお金の量)とインフレ率を比較したチャート(がインフレ率、がマネーサプライ)になります。

これを見ると、2020年にの線(マネーサプライ)が急激に上昇していることが分かります。これは、コロナ禍において、米中央銀行(FRB)が大量のお金を刷って市場に供給していることを示しています。

一般的に、モノやサービスに対して世の中に出回るお金の量が増えすぎると、物価上昇(インフレ)が起きると言われています。これは、供給よりも需要(購買力)が上回るからで、現在の資産バブル(株高や不動産高)やコモディティ価格の上昇(銅や鉄鉱石など)がこうした兆候を示しているともいえます。実際2020年2月15日時点で、銅価格は3.80ドルと約8年ぶりの高値水準を記録しています。

「株式投資の未来」で有名なジェレミーシーゲル氏も、Financial Timesの記事で、「ハイパーインフレが起こるとは思わないが、FRBが目安としている2%の物価上昇率は今後数年間に渡って優に超えてくるだろう。」と話しています。

さらに、チャールズ・シュワブの最高投資ストラテジストのリズ・アン・ソンダース氏もバロンズ社のインタビューで「ワクチンが行き渡って市場が完全に開放されれば、抑圧されていた需要の急拡大が起きる可能性がある。」と述べています。

このような識者の発言からも、一定程度のインフレは今後想定しておくべきだと考えます。

まとめ

2月8日に、テスラが15億ドル(約1,600億円)のビットコインを購入していたと報道されました。また、今後地金や金ETFなどにも投資する可能性があることにも言及しました。これは何を意味するでしょうか?

これは米ドルなどの法定通貨に対する信頼の低下を示しており、投資家だけでなく、事業会社も、コロナ禍における巨額の財政支出と金融緩和策による通貨価値の下落(=インフレ)を懸念しているのだと思います。

そして、インフレヘッジの手段として、金やビットコインなどに加えて、今回紹介したTIP(米国物価連動国債ETF)も選択肢に加えることができるのではと考えています。

この投資はどちらかと言うと大きなキャピタルゲインを得るための投資ではなく、あくまでも急激なインフレに備えるためのヘッジとしての投資になると考えています。