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近畿日本ツーリストが34億円の債務超過!今後どうなるのか?

近畿日本ツーリストを子会社に持つKNT-CTHDは、2021年2月9日に2020年4月~12月の決算を発表しました。そこで、34億円の債務超過に陥ったということが分かりました。(参照:JIJI.com

今回の記事では、そもそも債務超過とは何か?債務超過になるとどうなるのか?債務超過はなぜ起きる(起きた)のか?近畿日本ツーリストは今後どうなるのか?などを掘り下げていきたいと思います。

債務超過ってなに?

そもそも債務超過とはなに?ということですが、

債務超過・・・負債の額が資産の額を上回る状態

です。

つまり、貸借対照表(以下BS)の資産総額から負債総額を引いたときに負債総額が上回ってしまうことを指します。これは、現在所有している全ての資産を売却しても、借金(負債)を返すことのできない経営状態で、財務的にはかなり苦しい状況にあります。

実際、直近の決算短信によれば、近畿日本ツーリストの資産:904億円負債:938億円で、確かに34億円の債務超過となっています。(参照:第3四半期決算短信

ちなみに、コロナ前の2020年3月期は資産:906億円負債:722億円となっており、この時点では資産が負債を184億円上回る状態となっています。

債務超過の原因は何?

では、近畿日本ツーリストはなぜ今回の四半期決算で債務超過に陥ってしまったのでしょうか?

資産額が前年と比べてほぼ変わらないことから、負債額に大きな動きがあったと推測できます。

BSから負債の項目を見ると、「旅行前受金」が大きく増額していることが分かりました。

2020年3月期の旅行前受金:177億円

         ↓

2021年12月期の旅行前受金:379億円

→旅行前受金(負債)が202億円増えている

つまり、近畿日本ツーリストが債務超過となった主な原因は、「旅行前受金の増加」にあったと見ることができます。

旅行前受金とは?

では「旅行前受金」とは何でしょうか?

通常、「前受金」とはお客様に商品やサービスを提供する前に受け取ったお金のことを指し、「商品やサービスを提供する義務」が発生することから、BSでは負債の項目に分類されます。

お客様に商品やサービスを提供して初めて「前受金」を「売上」として計上することができるので、その結果BS上の「前受金(負債)」が減り、PL(損益計算書)の「売上」が増えることになります。

では、近畿日本ツーリストの場合はどうでしょうか?

旅行会社は、旅行の予約を頂いた際にお客様から「前受金」を頂きます。そして、旅行の業務を遂行して初めてその「前受金」が「売上」として認められることとなります。しかし、2020年に発生したコロナウィルスのパンデミックにより、当初予定していた旅行が遂行できなくなりました。その結果、お客様から頂いた「旅行前受金」を「売上」として計上できなくなってしまい、負債としてBSに残ってしまっていることが考えられます。

近畿日本ツーリストの経営は大丈夫なの?

KNT-CTHDの三宅貞行専務は東洋経済の記事で「手元資金が約500億円で、金融機関との間で300億円のコミットメントライン契約を結んでいるため当面の資金繰りは問題ない。」と話しています。

しかし、2021年1月に募集した希望退職に全従業員の約2割にあたる1,376人が応募し、その関連費として約60億円を費用として計上することになるので、依然として厳しい財務状況にあることは間違いありません。(参照:JIJI.com

2月10日の読売新聞の朝刊記事によれば、KNT-CTHDの親会社の近鉄グループHDが、債務超過解消のため増資などの支援に乗り出す方向で検討を進めているそうです。

原則、1年以内に債務超過の状態が解消されないと上場廃止になってしまうというリスクがあるため、人件費削減や店舗閉鎖などによる固定費の削減や、親会社からの資本注入によって、財務基盤を建て直すというのが当面の施策となりそうです。

まとめ

近畿日本ツーリストというと、JTBやHISに次ぐ売上を出していた旅行会社で、日本の至るところに支店を出している大手の旅行会社というイメージがありました。その会社が34億円の債務超過に陥り、上場廃止のリスクが生じているというのは、衝撃がありました。

旅行会社は厳しい状況で、JTBが資本金を1億円に減資するという報道も先日ありました。そのような中で、老舗の近畿日本ツーリストも、今後どのようにして経営改善を図っていくのでしょうか。

今後の動向にも注視していきたいと思います。