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米国のビッグデータ企業「Palantir(PLTR)」とは?

以前ネットサーフィンをしていた時に、テロや組織犯罪を追跡・暴くためのデータ分析を行う会社があり、その会社が「Palantir(PLTR)」であるというのを知りました。世の中にデータ分析を行う会社は数多ありますが、テロ対策などの特殊スキルが必要な業務を行う会社は少ないのでは?と思い、興味を持ちました。また、Paypalの創業者で、伝説の起業家とも言われるピーター・ティール氏が共同で創業した会社ということもあり、ますます関心が高まり、今回記事にすることにしました。

Palantir(PLTR)とは?

Palantirは、2003年に前述のピーターティールなどが共同で創業しました。CIAのベンチャーキャピタルである「インキュテール(In-Q-Tel)」から3億ドル(約300億円)の出資を受けたことでも知られており(参照:mattermark)、米国政府や諜報機関とのつながりが強い会社です。2020年9月にニューヨーク証券取引所に上場し、2021年5月31日現在、時価総額は430億ドル(約4.3兆円)となっています。

Palantirのサービスは主に2つあります。

① 「Gotham」・・・防衛・諜報機関向けのデータ解析ソフト

② 「Foundry」・・・民間向けのデータ解析ソフト

膨大な数のデータを集めて、統合し、組織が正しい決断を下す一助を担うという趣旨のようです。ただ、CEOのアレックスカープが「この会社を作ったのは西側諸国を支えるため」と語っているように、米国やその同盟国に敵対している国(中国やロシアなど)とは取引をしないというポリシーがあります。

Palantirの軍事的なつながりに目がいきがちですが、コロナ対策関連の事業も受注しており、少なくとも12の政府機関とコロナウィルス関連のプロジェクトを進めている他、英国のNHS(国民保険サービス)もデータ解析にPalantirのソフトを利用しています。民間企業でも、投資銀行のクレディスイスや製薬業界、保険業界などあらゆる業界でPalantirのソフトが利用されており、様々な用途に応用が利くサービスを提供していることが分かります。

Palantir(PLTR)の売上高推移

(参考: yahoo finance)

2018年:5億9,000万ドル(約590億円)

2019年:7億4,000万ドル(約740億円)

2020年:11億ドル(約1,100億円)

2021年:14億ドル(約1,400億円)←2021Q1の実績売上高から筆者計算による予測値

CAGR(売上高成長率):33%

売上高は年率30%で上がってきており、直近のPalantirのEarnings Reportでも、2025年までの5年間、年率30%以上で売上を伸ばすというガイダンスが出ており、今後も順調に業績を伸ばしていくことが予想されます。

売上高の比率は、政府向けと民間向けが大体半々を占めています。

(出典:Palantir公式HP

地域別売上高は、米国がおよそ50%を占めており、英国やフランスを含む海外が50%となっています。

(出典:Palantir公式HP

Palantir(PLTR)の株価推移

Palantirは、2020年9月に上場なのでデータが1年に満たないですが、2021年の2月に最高値45ドルをつけて以来、下落トレンドにあります。5月には17.82ドルまで株価を下げたので、2月の高値から-60.4%の下落と、ボラティリティが高い銘柄となっています。原因としては、長期金利の高騰が一番に挙げられます。2月は1%を少し越えるくらいだった米国の長期金利が、3月には1.7%を越え、いわゆる高PER株が多数売られました。Palantirもハイテク株で、期待で買われていた部分が大きかったので、下落に転じたという事だと推測されます。

Palantir(PLTR)の株主構成

Palantirの株主構成を見てみましょう。

(出典:Market Screener

株主構成を見ると、創業者のピーターティールが11.4%で大株主となっており、日本のSOMPOホールディングスも5.96%のシェアを持っているようです。

日経の記事によれば、保険や介護などで得たデータをPalantirと組んで分析し、新事業に生かすのだそうです。

その他には、世界三大資産運用会社の一角であるバンガード社や、破壊的イノベーションをもたらすビジネスに投資をするARKインベストメント社などが多くの株を保有しています。

Palantir(PLTR)の今後

私がPalantirを調べていて持った印象としては「かなり尖った会社」ということです。創業者のピーターティールは熱烈なトランプ元大統領支持者であることで知られており、トランプ大統領時には少なからず恩恵を受けたと言われています。また、シリコンバレーで創業しながらもシリコンバレーの風土を批判しており、実際本社をシリコンバレーからコロラド州デンバーに移転しています。

CEOのアレックスカープは、スタンフォード大学のロースクールを卒業した後、ドイツで哲学の博士号を取得しています。いわゆるIT企業の社長の経歴で連想しがちなMBAや情報工学の専門などではなく、彼は哲学を好みスタンフォードの同級生であったピーターティールとは夜な夜な政治議論をする仲であったと言われています。GAFAなどの経営者で見られる”カリスマ性”というよりも、”思想家”と言った方が良いのかもしれません。

そんな稀代な”起業家”のピーターティールと”思想家”のアレックスカープが組むPalantirですが、彼らが提供するデータ解析技術は世界最先端とも言われており、テロ対策に加えてコロナ対策や、民間企業でもその技術が応用されています。

国の防衛や軍事に係る事業ということで賛否両論はあるかと思いますが、昨今の地政学リスクの高まりや米国が年間で7,782億ドル(約80兆円)もの軍事費を支出していることからも、今後も引き続き重要な課題であることは間違いないでしょう。そして、いわゆる兵器などの”ハード面”だけでなく、AIやビッグデータ等を活用した”ソフト面”が今後より重要性を増してくることも容易に想像できます。そうしたことから、Palantirが今後何を大事にして、事業を行っていくのか見ていきたいと思います。

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