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投資家なら絶対に知っておきたい米国の製薬会社10選(前編)

今回から、前編と後編の2回に分けて、「米国の製薬会社」を取り上げたいと思います。2020年にコロナウィルスのパンデミックが起きて以来、ワクチン開発などを通じていくつかの米国の製薬会社がニュースで報道されました。僕は、コロナが収束した後も「健康」・「医療」の分野は、人類の大きな課題だと認識しています。そこで、今後注目していきたい米国の製薬会社を10社、この記事で紹介したいと思います。皆さんの誰もが知っているような企業から、先端技術で今後注目されそうな企業までカバーしていますので、是非ご一読下さい。

① ファイザー(PFE)

ファイザーは知らない人はいませんね。現在、ドイツの企業バイオンテック(BNTX)と共同開発したコロナウィルスのワクチンが世界中で接種され、かなりの効果が立証されつつあります。ファイザーはワクチン以外にも様々な薬を開発しており、乳がん治療薬「イブランス」などが同社の売上を支えています。時価総額は2,022億ドル(約20兆円)で、世界の時価総額ランキングで50位となっています。

上の表を見ると、売上高は横ばいもしくは若干上下はあるものの、利益率は概ね20%を超えており高収益体質であることが分かります。また、ファイザーは高配当株としても知られており、2020年の年間配当金実績(1.52ドル)で計算した場合の配当利回りは4.19%になります。

② メルク(MRK)

メルクは時価総額が1,958億ドル(約19.5兆円)で、世界の時価総額ランキングでも55位と米国の老舗の大手製薬会社です。メルクはコロナワクチン開発計画が途中で頓挫したため、日の目を見る事はできませんでしたが、逆に言えば株価が大きく上がることはなかったため、割安に放置されている可能性があると見ることもできます。メルクが開発する医薬品で最も売れているのは肺がんなどの治療に使用される「キイトルーダ」で、2020年の総売上高のおよそ30%を占めています。(参照:Merck News Release)しかし、この薬は2028年に特許が切れるため、これに変わる稼ぎ頭を見つけないといけません。メルクは子宮頸がんワクチン「ガーダシル」を始めとしたワクチン製品や、HIV治療薬「イスラトラビル」などの開発パイプラインも持っているため、今後の動向に注目です。

メルクの2020年の売上高は約480億ドル(約4.8兆円)で、利益率は15%となっています。ほぼ売上高も利益率も前述のファイザーと変わらないので、やはりメルクも米国で有数の製薬会社ということが分かります。

③ イーライリリー(LLY)

イーライリリーは、2020年の売上高は約250億ドル(約2.5兆円)、時価総額は1,777億ドル(約18兆円)と、米国内でもトップ10に入る製薬会社の一つです。主力医薬品は、「トルリシティ」という糖尿病治療薬で、全体の売上高のおよそ20%を占めています。また、現在イーライリリーはアルツハイマー型認知症治療薬の「ドナネマブ」を開発中で、臨床試験を行っています。2021年1月には、「アルツハイマー病患者の初期症状の進行を32%遅らせた」という発表をしていることからも、今後の新薬開発の動向に要注目です。同じアルツハイマー型認知症治療薬の開発では、バイオジェン(BllB)も開発に力を入れており、イーライリリーとバイオジェンのどちらが先に承認を受ける事ができるか見ていきたいと思います。

売上高は少しずつではありますが、右肩上がりの傾向で、利益率も直近2年はそれぞれ37%、25%と非常に高い数値で推移しています。今後の新薬開発により、ますますの売上上昇に期待です。

④ ジョンソン&ジョンソン(JNJ)

ジョンソン&ジョンソン(以下:J&J)も、誰もが知っているグローバルカンパニーの一つですね。J&Jは製薬だけでなく、ヘルスケア関連商品、医療機器も取り扱っています。2020年の全体の総売上高は826億ドル(約8.3兆円)で、その内の約55%である456億ドル(約4.6兆円)が、製薬からの売上となっています。また、J&Jで特筆すべきは、その豊富なキャッシュフローからくる配当政策でしょう。2020年の時点で、57年連続増配という記録があり、特に安定的に運用をしていきたいという方にはオススメできる銘柄となっています。

上の表は、J&Jの製薬部門の売上高の推移です。ここまで大きな会社が毎年売上高を伸ばしているのはすごいことですね。2015年~2020年の5年で、年平均売上高成長率が8%となっており、この会社が多くの個人投資家を惹きつける理由が分かる気がします。

⑤ アッヴィ(ABBV)

アッヴィは、2013年に老舗のヘルスケアカンパニーであるアボットラボラトリーズ社の分社化により設立されました。2020年の売上高は、458億ドル(約4.6兆円)、時価総額は1,884億ドル(約19兆円)で世界で57番目とファイザーやメルクに匹敵する存在感を示しています。アッヴィの主力医薬品は関節リウマチ治療薬として知らている「ヒュミラ」で、2020年の総売上高の40%以上を占めています。しかし、ヒュミラは米国での特許切れを2023年に迎えるため、ヒュミラに代わる新薬が求められています。そのような中で、2020年に美容医薬品で定評のある「アラガン」を買収し、アラガンからの利益が期待できる他、「スキリージ」や「リンヴォック」などの新薬がヒュミラの代わりを果たすのではないかと言われています。

上表は、2015年からの売上高と利益の推移となっていますが、非常にきれいな右肩上がりを示しています。利益率も2016年以降15%以上を維持しており、堅調な財務が見て取れます。また、アッヴィはJ&Jと同じく配当貴族として知らており、47年連続増配という記録を持っています。配当利回りも4.87%(ヤフーファイナンス参照)となっており、高配当株としても人気の銘柄です。

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